20 9 / 2010

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 融和と保護を訴える「アイヌ統一委員会」の池博士と、アイヌの風俗を描くことを得意とする女画家・佐伯雪子が、北海道の各地を旅し、さまざまな人物と接します。はじめは自然描写やアイヌへの優しい眼差しが念入りで、舞台を壮大なものに仕立てますが、次第に血筋と人間の対立という、アイデンティティを核とするテーマが見えてきます。

 博士が掲げる外部からのどこまでも穏健な理想像は、アイヌの内部から登場した破壊者(あるいはリアリスト)・風森一太郎の存在によって、ねじれまくります。事態の発生と収拾に理路整然としたものはなく、まさに血が騒いだとでもいうように、一太郎の行くところには混沌が生じます。博士一太郎はかつての学問上の師弟であり、さらに2人の女性をめぐっての因縁があったりして、ドラマが盛り上がります。

 さらにそこに、さまざまな考えを持つアイヌの人々が絡んできます。たとえば、自分の振る舞いや伝統的な風習を観光客に見せて金銭を得ることを受け入れる人がいる一方、自分はアイヌじゃないシャモ(日本人)だと言い張って、血筋を徹底的に隠して生活する人がいます。また、過去は決して追求せず、アイヌも進歩的で何が悪いと言って、努力と才覚により経営者となり成功し、日本人を雇う立場に立つ人もいます。血筋や民族への思いが交錯し、複雑で、アイヌのみならず、すべての少数民族に通じるところでしょう。日本人には、決して分からない部分でもあります。

 膨らんでは萎むサブストーリーや増えては消える登場人物など、書きながら考えたという感じの小説です。というのも、著者の北海道体験により実際に見聞きした話や、雑誌への連載中に読者から送られてきた体験談を可能な限り詰め込んだためだそうです。昭和30年頃のアイヌの姿を、言語、文化、お祭りなど、彼らの周囲の空気ごと、存在ごと、そのままリアルに伝えるもので、読み物プラス貴重な資料ともいえそうです。

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